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造形製作にデジタルを使う時

造形製作 には、「アナログ」と「デジタル」の方法があります。
アナログ での造形製作は、細かな技法はともかく 何となくイメージは付くと思います。
材料を盛ったり、削ったり…という事です。

でも、デジタル の造形製作は どうでしょう。
知っているようで、実は 具体的に どんな製作方法 を指しているのか わからない、という方も多いのではないでしょうか?

デジタルの造形製作 は、簡単に言えば、
■ 3Dモデリングソフトを使い、パソコン上で造形し
■ そのデータを3Dプリンターにかけて、立体物を出力する
ということです。

ゼペットでも、デジタルでの造形製作のお仕事は よくお受けしますが、実際は 上記の作業だけで完了するお仕事は、あまりありません。
では、どのようなフローで デジタルの造形製作をすることがあるのか?
そもそも、どんなお仕事を デジタル でお受けするのか?

今回は、「デジタルでの造形製作」に焦点を当てます。


デジタルとアナログ造形製作の使い分け

造形製作において、アナログ と デジタル のメリット・デメリットは…というような話を聞いたことがある方は多いと思います。

ですが、そう考えるよりも
『適材適所で デジタル、アナログを使い分ける』
というのが、造形製作では ベストな説明かもしれません。
その二つを敢えて言い分ける必要はなく、あくまで技法の一つという 捉え方です。

では、デジタル が特に力を発揮するのは、どんな点でしょうか?

一つに、シンメトリー(対称)なデザインと構造である事が挙げられます。
アナログの造形製作では、 粘土造形やスチロールの切削等で 形状を再現します。
しかし、左右対称に 物によっては寸法まで正確に立体を作るのは 何気に難しく、時間のかかる作業なのです。

ロボット や ヒーローのデザインなどは、シンメトリーな物が多く見られます。そんな時は、デジタルが活躍します。
3Dモデリングソフトに、シンメトリーに造形できる機能があるからです。

その他にも、例えば「幾何学模様」のような テクスチャー(模様・質感)が必要な場合。
物によっては、人間のアナログ技術は [モデリングソフト & 3Dプリンター]のタッグに、
・正確性
・精度
・造形する時間
において圧倒的に敵わないケースもあります。

モデリングソフトの機能を活用し、精度高く 3Dプリンターで出力することで、効率よく造形製作が可能になるのです。

上の画像は、以前に弊社で製作したプロップ(小道具)をモデリングしている最中のものですが…
このような規則的で正確な模様を、人間がアナログの造形技術で再現するとなると、気が遠くなってしまいますよね。

ごく一部の例ではありますが、こんな時に ゼペットではデジタル技術を選択するケースが多いです。


造形製作のフローは デジタルとアナログの融合

冒頭にも書きましたが、ゼペットでお受けする造形製作のお仕事は、デジタル作業だけで完了することは あまりありません。

それは どういうことなのか?
ここでは、事例をあげてご紹介をします。

©️Japan Airlines.

このロボットは、ゼペットでお受けしたお仕事の一つで、「外装」の製作 を担当しました。
ツルンとした シンメトリーのデザインで、細かく設計された3Dデータを提示頂きました。
外装のボディーの形は 3Dデータを出力して製作をしていますが、出力した物をそのまま塗装をして仕上げたわけではありません。それは何故なのか?

3Dプリンターでの出力に使う素材の 種類 は沢山あり、ポピュラーな物では[ABS樹脂]、大型のものであれば [スチロール]などが挙げられます。
造形製作において、アナログ・デジタル両方に共通して重要視することは、
「使用する材料が 製作する造形物に適しているか」
という点です。

このロボットは、お客様対応ロボットで ボディーはそれなりの大きさがあります。
大きいということは、それに伴い 重量も発生します。ですが、

・動くためには 外装は極力軽く製作したい…
・でも、耐久性がなかったら 意味がない…
・量産をしていく可能性もある…

そのような制約や可能性を踏まえ、選んだ方法(フロー)は、

「3D出力をした造形物 を 別の素材に置き換える」というものです。

ご提供頂いたデータを [3Dプリンターで出力した形]=[原型] とし、その型を取ります。
そして型を使い、軽量 且つ 丈夫な素材を用いて 成型 をするということです。

型を作ってしまえば、同じ形の造形物を 複数個製作することが可能なため、先程の制約は全て解消できることになります。

よって、このロボット外装の造形製作では、
大きなボディーは[原型のみデジタル技術]を使い、その後はアナログ技術にて作り上げたのです。

©️Japan Airlines. JAL お客さま対応ロボット『JET』外装制作

今回ご紹介したのは、多種多様な造形製作の事例の ごく一部分ではあります。

以前、「造形物の制作方法は どのように決めるのか?」という記事で、お客様のご要望に応じて最適なプランをご提案するということを書きました。
[ご予算][スケジュール][造形物の用途]などによってプランを練る、というお話です。

デジタルにするか・アナログにするか というのは、結局は お客様のご依頼に対して 総合的にどう使い分けるのが最適かを検討して 選択をするものになります。

お客様にご提供頂くデザイン や その他のご条件によって、デジタルの方法が最適であれば 我々が3Dデータを制作するケースもありますし、お客様が製作したい造形物の3Dデータをお持ちの場合もありますからね。

造形製作では、デジタルもアナログも 欠かせない技術なのです。

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