特殊造型メイキングコラムColumn

Column

造形物の制作方法は どのように決めるのか?

造形物を制作する方法、というのは 一つだけではありません。
どのような制作方法にするか は、単純な決め方ではなく、

・造形物の用途
・ご予算
・納品までのスケジュール

などを お客様から伺い、その上で制作プランを練ってご提案をします。

お客様が重要視するポイント が どこにあるか?を伺っていくと、 【軽さ】が 重要なポイント の場合もありますし 、多少 造形物に重量があっても良いので ディテールの【精密さ】を 重要視するお客様も いらっしゃいます。

実は、そのポイントによって 制作方法がガラっと変わることもあります。
複数の拘りのポイントを天秤にかけた際、どちらかを優先しなければならない場合も 出てくるのです。
そこで今回は、弊社でお受けしたお仕事を例に、制作方法の一部をご紹介します。


軽さ と スピード を重視

こちらは、ゼペットで過去に制作をした
オリンピック競技[近代五種]の 応援キャラクター です。

ギリシャ神話に出てくる、ケンタウロス(半人半獣種族)のようなフォルムのキャラクターを、人間に特殊コス チューム を装着する形で再現したい、というオーダーでした。

ここで重要なポイントとなったのは、
【人間が装着するため、軽く制作すること】 でした。

軽量なものにする=[素材が軽量]でなければ、成立はしません。
造形業界が使う 軽量な素材 というと、発泡した材料です。
身近なモノで言えば、発泡スチロール でしょう。

スチロールのような 発泡素材 は、形を作った後に表面をコーティングしたり、生地を貼り込むことで仕上げを 行います。
今回のキャラクターは 馬がモチーフになっているため、短毛のファー生地 を貼って 表面仕上げが出来る と いう利点がありました。

発泡素材 を削り出して造形する方法は、[スピード]もメリットの一つです。

彫刻した素材を そのまま加工していくことも可能ですし、大きな造形物 を作る際、粘土を盛り付けて造形するのは[時間とパワー]が必要です。
また、型取りをして 別の素材 に 置き換える必要があるため、そのまま加工していくことができません。

様々な条件 と ポイント を考慮した結果、 このキャラクターの 特殊コスチュームは、発泡素材 で製作することになったのです。


細かな表現 と 複数オーダーへのご提案

他には どんな制作方法があるのか?
同じく「馬」をモチーフにした 、別のお仕事のケースをご紹介します。

© Japan Racing Association

こちらの 馬のマスク は、2015年に配信された、日本テレビ WEB限定オリジナルドラマ「走れ!サユリちゃん」の撮影のために 制作したものです。

このマスクは、先程の 特殊コスチューム とは違う工程で 制作をされています。 馬の頭の形は 粘土で造形し、その[原型]の型をとって 型に、材料を流し込むことで 制作をしているのです。

もちろん、このマスクも 先程の特殊コスチューム同様に 発泡素材で制作していくことも可能です。

ですが、様々な条件を考慮した結果、粘土で[原型]を作って[型取り]をする という制作方法になりました。

例をあげると、

・役者の頭部のサイズにしっかり合わせる必要があったこと。
・顔のパーツ(目・鼻・口)など 細部の彫刻が必須であったこと。
・メカを仕込んで 顔の表情を動かす[アニマトロニクス]技術 を使用するために、馬の皮膚を 非常に柔らかい 素材(型に流し込んで 固める素材)にする必要あったこと。
・同じ顔のマスクを 二つ以上 作る必要があったこと。

などです。

型があれば、複製が可能です。
一度型を作れば 同じ材料を流し込み、全く同じ顔を 複数制作することが出来るのです。


造形物の制作方法 は、決まり切っていることはありません。
造形に使う「材料」も、実は どんどんと進化をしています。

そのため、常に 最適な方法 をご提案できるよう、創意工夫を凝らすのが 私たちの任務ですね。

RECOMEND COLUMN